「…ねぇマスター」

青い空と白い雲。
日差しの下で桃色の髪の少女が問う。

「……どうした、リディ」

今の体感気温はどのくらいだろうか。
暑がりも、あるいは寒がりもせず、
否、温度を気にすることすら忘れ、
リディはボーッと遠くを眺めている。

呆然。

自分も含めた2人の姿
―魔剣たちも含めればなかなか大所帯―
は、まさにその状態である。

「…どうなってるのかな……?」

リディが小さく口を開く。
遠く一点を見つめたままの大雑把な問いは、
彼女の混乱を示している。

「……さぁ、わからない、な」

即答。

考えもせずに回答することが、
どれだけ幼稚であると指摘されようと、
今はその恥辱も受け入れよう。

それ以外に返答のしようがないのだから。

「私たち、遊びに来たんだよね…」

「そうだな、遊びに来たな…」

「バケーション、なんだよね」

「猫にサバンナに火山、
いろいろがんばったからな」

「リゾート地、なんだよね」

「魔界有数のリゾート地だな」

「ここがあの有名な
《ドゥルガー海岸》なんだよね」

「さっきの看板にも書いてあったな、
《ここがドゥルガー海岸》って」

「じゃあさ、じゃあさ」

「うん」

ようやくもってリディがこちらを向く。

見たこともない、驚愕と絶望と、
混乱と困惑と、それを足して割らないような
そんな表情をしている。

今にも泣きそうなリディの大きな瞳が、
何かを訴えかけるようにこちらを見つめる。




「どうして、海、
凍ってるの…?」


















近日、作戦開始。








―――刹那。
目の前でキラキラと煌きながら、
艷やかな銀髪が揺れる。

「…司書王ロルリアンレット、様?」

「あら動きが早くて感心だわ、魔剣使い」

「………世界図書館が動くってことは、
これは相当やばいやつってことですか」

「相当?ふふ、凍った海を見て、
まだそんなことを言っていられるなんて。
魔剣機関のわんこたちはこの寒さで
脳がやられてしまったのかしら」

「既に、原因の特定が―――」

遮るようにロールの細い指が差し出される。

「ニュースが2つあるわ、魔剣使い。
どちらから聞きたいかしら?

1つはバッドニュース。

もう1つは………

ベリーバッド」