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鍛冶医師クランベリー
『寂寞に 喜び集う 毒の花』
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世界図書館メイド長ププッピマリー
あら……クラン様、魔界川柳を嗜まれるのですか?
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ええ、最近は詠んでいなかったのだけど……
あの名前を見たら、つい、昔のことを思い出してね。 |
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──マトリカリア。
世界図書館の植物図鑑には、 「魔界の草原に咲く、美しく可憐な白い花」と紹介がありますが…… |
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ええ、たしかに見た目はとっても可愛らしいお花よ。
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見た目は、ですか。
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かつて魔界に「毒もみ」と呼ばれる漁法があったことはご存じかしら?
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書物で目にしたことはございます。
たしか──「海や河川などに毒を撒いて魚を取る漁法」、だったかと。 |
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ええ、獲物を一網打尽にでき、かつては絶大な成果を挙げていた漁法ね。
ただ、倫理的、環境的問題から現代においては禁忌となった。 |
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その禁忌に、マトリカリアが関わっていた、ということですか。
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察しがいいわね。マトリカリアの分泌物は、
特定の魔物を麻痺させることに適していたの。 |
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なるほど。
その特性ゆえに、マトリカリアは「毒もみ」で盛んに利用された。 |
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ええ。マトリカリアを用いて「毒もみ」が行われた海では、
動かなくなった獲物と、可憐な白い花だけが残る── |
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ぴく、ぴく……
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そう、こんなふうにね……
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──ってマグロちゃん!? ──ってマグロ様!? |
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マグロ様、どうされたのですか?
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マグロは……その名前を聞くと、震えが止まらなくなるのだ……
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ぴぴーっ!あうとー!
マグロちゃん相手にマトリカリアちゃんの話はレッドカードです! |
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どこからともなくアマリリスちゃん!?
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そういえば……マトリカリアは、
魔界のマグロ漁で特に圧倒的な力を発揮したと聞いております。 |
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なるほど、それで……
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ぷるぷる……マグロ、わるいマグロじゃないのだ……
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マトリカリアの花言葉はたしか……「鎮静」「喜び集う」だったわね。
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あらゆる手段をもって、獲物を鎮め、水平線に静寂をもたらす……
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そして、静まり切った獲物の元に、白き花が喜び集う……
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獲物の命を逃さず摘み取る、白き花。
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一介の花が魔剣化するには、それ相応の伝承が要るはずだけど……
マトリカリアは、魔剣機関に「大鎌」として登録されてるわね。 |
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狙った命を逃がさず刈り取るその思想が、
「鎌」として実体化し、魔剣と化したということでしょうか。 |
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おそらく、そうでしょうね。
一つの命を奪えば「事件」でも、百万の命を奪えば「伝承」となる。 |
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つまりマトリカリアは、「伝承」として残るほどに、
「大鎌」として登録されるほどに、多くの命を奪った……? |
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そ、そんな魔剣が来たら……マグロは、どうなっちゃうのだ?
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きっと、こんなふうに……
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あーっとマグロ、完全に沈黙!!
組み伏せられてダウンだぁぁ!! |
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マグロが、マグロ状態なのだ……!!
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そして見てくださいこのギザ歯!!
あっという間にマグロちゃんを美味しくいただいてしまいそうです! |
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や、やばいのだ!!!!
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おおっとマグロちゃん、たまらず逃げ出したぁー!まってー!
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なるほど……どんな魔術、魔力を持ち合わせていようと、
行動そのものを止められてしまえば、その威力は発揮しようがない。 |
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麻痺毒を分泌する大鎌というのは…
獲物の命を確実に屠るためには、この上ない武器と言えそうです。 |
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はぁ、困ったわね全く。
元のモデルからの飛躍が大きい魔剣ほど、修理方法の解明が難しいのよ。 |
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未知への挑戦こそ、鍛冶医の真骨頂でございませんか。
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まあ、それもそうね……本当に厄介な事象が生じた場合には、
世界図書館のお世話になるかもしれないから、そのときはよろしくね? |
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承知いたしました。
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ふふ……なんにせよ、今回の子も、なかなか期待できそうね♪
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わくわくするわ♪ 楽しみですわ♪ |