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鍛冶医師クランベリー
うーん……
これは、どういうことかしら? |
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世界図書館メイド長ププッピマリー
どうかされたのですか?
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ああ、丁度いいところに。
この資料、ちょっと見てもらえる? |
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拝見いたします……。
特におかしなところは見当たりませんが? |
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ええ、書かれているのは紅茶に服飾、芸術。
ただの趣味趣向に関する情報よ。 |
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私が判断できますのは、資料に書かれた方が相当な好事家であること。
特にこの紅茶の銘柄はお嬢様も好まれ── |
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…………。
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お待ち下さい、クラン様。
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気づいたようね。
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この資料は……どちらの?
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魔剣機関から得た、新魔剣の秘匿情報よ。
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そのようなことがあり得るのですか?
これはまるで── |
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ええ、『ただの人間』と変わらない。
魔剣はどうあっても兵器。 人格は魔剣少女としての副次的なものであるはずなのに。 |
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しかし、この魔剣にとっては
兵器としての自己も、少女としての自己も同列であると……? |
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そうなるわね。
そして私の推測が正しければ……それはとても恐ろしいことよ。 |
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なるほど……
本来先立つはずの兵器の側面を単なる一部としながら、 自己矛盾に陥っていない。 |
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そう、おそらく絶対的な自己定義が理由。
自らの全てを肯定し、意義を認めなければこうはならないわ。 自分が存在するだけで、もうそこには意義がある、とね。 |
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そして、私達を決めるのは自己だけではありません。
私がお嬢様の従者として存在するのと同じように、 周囲の人や物、事柄、それらも定義づけることが必要です。 |
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ゆえに、この魔剣ならば
相手の定義を変え、存在を歪めることも容易いでしょう。 |
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また恐ろしい魔剣が現れたものです……。
ところで、こちらの魔剣のお名前、まだ伺っておりませんが。 |
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ふふ、聞いたら驚くわよ。
いえ……むしろ納得するかもしれないわね。 |
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それはどういうことでしょう?
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ここまで『魔剣らしくないこと』にこだわる魔剣は見たことがない。
けれど、『魔剣らしくあること』に同じくらい存在意義を置いた魔剣を、 私達は知っている。 |
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存在意義、ということは──
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私のことだろう?
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これは、レゾンデートル様……。
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珍しいわね、こんなところで会うなんて。
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フフ……
どうやら、妹の話をしていたようだから、少しな。 |
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なるほど、つまりこの情報はレゾンデートル様の……。
失礼ですが姉妹というにはあまりにも……。 |
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ああ、みなまで言わずとも分かるさ。
ベルセは享楽を好み、戦いすら見世物にする。 戦場のみに生きる魔剣とは正反対だとな。 |
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魔剣の本質を戦いとするなら、
そこからはかけ離れた魔剣よね。 |
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それ故に、ただの兵器として扱うには難しく、
典型的な魔剣使いならば、自らを滅ぼすことになる。 |
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多くの魔剣使いにとっては、魔剣を兵器として扱うのは
当然のことだもの。 |
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けれど、それではこの魔剣を使いこなすことはできない。
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だが、甚だ身勝手でも、兵器としての性能は本物だ。
ベルセの全てを、自由意志を認めるような酔狂がいれば、 ……あのマスターならば、あるいはな。 |
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やはり、魔剣は不思議ね。
合わせ鏡のような二人が姉妹となるなんて。 |
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正反対だからこそ、だろう。
戦うだけの魔剣である私、そうではない妹。 だから我々は……いや、それもまた私には瑣末事だ。 |
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邪魔をした。
私はそろそろ次の戦場へと向かうとしよう。 |
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……戦うことにのみ特化し、
兵器としての本質だけを存在意義としたレゾンデートル。 |
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一方、戦いだけを意義とせず、
自らの全てを肯定……いえ、存在意義としたのが |
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レゾンデートル=ランベルセ。
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逆さまの存在意義──
レゾンデートルの対極を抱く魔剣なのですね。 |
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まったく、
魔剣の定義すら揺らがせる魔剣がいるなんて、 ほんと、魔界は飽きさせてくれないわ。 |
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はい。この方との出会いで魔剣が、
そして私達の定義がどのように変わっていくのか。 |
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わくわくするわ♪ 楽しみですわ♪ |