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クラン
私たちの心はいったいどこから生まれるのかしら?
そもそも心と感じるものはなんなのかしら? |
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マリー
いつになく詩的にたそがれていらっしゃいますが、
どうされたのですか、クラン様? |
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ほら私って鍛冶医…つまりはお医者さんの一人じゃない?
精巧な生命の神秘を我々が対処できる領域まで解体する科学の輩… その視点では心さえも科学的な根拠のあるシステムなのよね |
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私も魔導生命の探求に心血を注いでいた者としてわかります
心は人々が言うほどに特別なものではなく、 生命の継続に必要な機構と言い切ってしまうこともできるでしょう |
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でもこの道を進む中でいつしか気づかされるのよ
心とそこから生み出される感情はそんなに冷徹なシステムではなく 時に理論や想像を超えた力を私たちにくれるのだもの |
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私自身もあらゆる知識を得たと高慢になっていた時に、
自分の感情さえ理解できていなかったと気付かされたことがありました |
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心も感情も神様がつくった生命の設計図に入っていたとしたら、
この摩訶不思議な感情の正体はなんなのかしら? さっきの報告を聞いて、ふとそんなことを思ってしまったのよ |
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なるほど…たしかに魔界にとって再びの急報でしたね
魔界の神であるマスターキーの一人、 暁の鍵師アーベントロート様が魔剣になったという事実は |
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アーダちゃんに続いて、
彼の魔剣として加わった《全知全能》マスターキー! そしてその力は…生命体の感情を自在に操ること! |
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魔界で暮らす生命体の感情を生み出し、制御していたのも、
アーベントロート様だと聞いていますね |
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アーダちゃんが発展に必要な外部リソースを適切に分配し、
繁栄を制御していたのに対して、 人間の内面的な力を制御していたというのなら対称的ね |
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アーベントロート様がその気になれば、
意思と関係なく笑い、泣き、怒り、自身を制御することができなくなります |
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それは相手の体内機能の全てを掌握することと同義よ
感情の高ぶりは魔力の制御や出力にも大きく影響することがわかっているわ そして感情を生み出すためのホルモンの分泌や電気信号まで、 神のように操ってしまうことができるの |
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この力を自在に使えば、
相手にアーベントロート様を親友や家族のように思い込ませることも可能 対人間という点では強力すぎる力と言えますね |
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相手の体を制御というとクリーフォートちゃんにも似ているわよね?
彼女の力は相手の体の制御を完全に奪い、支配することだもの |
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たしかにそうですね
ですが肉体の支配に主眼を置かれているクリーフォート様に対して、 アーベントロート様は魂に強く影響を及ぼすという点で違いも大きいかと |
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王の剣として相手を支配するか、
神として相手の魂までも自分の好みに染め上げるか… 表層的には似ていても、極めた先の力は異なるということかしら? |
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はい、特にアーベントロート様は感情を制御することで、
魔界を発展・存続させるという役目を持つマスターキーでしょうから、 外からの支配でなく、内からの変容を重視していると思われます |
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なるほど…
人間社会の発展に感情を利用したいというのなら、 自然に湧き上がるものと誤認させたほうが良いものね… |
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先程の話についても、
彼女にとっては感情も心も制御可能な存在だったはずであり、 神としてそうでなくてはならないものだったはずです |
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でもそうじゃなかった
だから彼女は彼に恋をして、神ではなく魔剣になることを選んだのね |
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私たちと同じように、
神にとっても感情とは摩訶不思議で制御不可能なものだったのでしょう |
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恋に落ちちゃった神様…とてもロマンチック♪
でも私、別の見方もあるんじゃないかと思うのよ |
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と言いますと?
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彼女の役目は《愛し愛される者》でしょう?
つまり感情を与えたり、人を見守るという愛する行為だけじゃない 愛されることもまた彼女に定められた運命だとも思うの |
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つまり…彼女に役目を与えた者たちは、
いずれはアーベントロート様自身が愛される立場になると… 制御を離れると予期していたということでしょうか? |
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私たちが考えていたとおりに、
理論や理屈を乗り越えて強く影響を与えることが感情の真価だとしたら、 制御して与えるだけではいつまでもたどり着けないでしょう? |
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壮大なお話ですね…
まるで《生存者》と呼ばれるマスターキーを造った者たちが、 世界に対して宿題を提示しているようです |
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ただ与えられたものを享受するだけじゃ足りない
その枠を超えて感情を輝かせて見せろみたいに思っていたなら、 ふふふ、すごく理想主義ね♪ |
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そして今のクラン様の言葉で気付かされたのですが、
もしやアーベントロート様は、 これまでご自身の真の力を発揮できていないのでは |
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えっ……!?
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彼女は神というシステムとして、
愛する制御するという側面でしか感情を捉えられていなかったのです しかし今は愛されることを知り、制御から外れたありのままの心を捉えた… |
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ただでさえ世界の感情を制御していた神様だったのに、
さらにその先の力があるっていうの…!? |
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断言はできませんが
私たちが実感したように心とは摩訶不思議で制御不可能なもの うまく使えば武器となり、時には足かせともなります そして愛とは…そんな感情の中でも最も強いものの一つですから |
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愛を知った神様が、限界なんて遥かに超えちゃう…
それはとっても怖いけれど、同時にドキドキもしちゃうわね |
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はい、彼がこれからアーベントロート様とともに、
どのような感情を与え、貰っていくのか |
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そして本当の愛を知った元神様が魔界にどんな愛をもたらすのか
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わくわくするわ♪ 楽しみですわ♪ |